けがや病気の中でもっとも重篤なものは、心臓が停止した状態です。心筋梗塞や脳卒中などは何の前触れもなく起こり、心臓と呼吸が停止してしまうことがあります。また、けがで大量出血したときも応急手当てをしなければ命の危険があります。
救急車を要請して現場に到着するまでの平均時間は、6〜7分と言われています。しかし、時間が経過するとともに死亡率は高くなり、心肺停止状態3分で50%、呼吸停止後10分で50%、多量出血後約10分で50%になります。救急車が到着するまでに、一刻も早い救命措置が必要なのです。
救命の手順
1. 意識の確認
「大丈夫ですか」など、3回くらい呼びかける。鎖骨あたりをたたき、痛み刺激を行う。
2. 助けを呼ぶ
「誰か助けてください!」と、大きな声で呼ぶ。周りの人に、「救急車の手配をお願いします。」「AEDの手配をお願いします。」と依頼する。
3. 呼吸の確認
傷病者に口と耳を近づけ、普段どおりの呼吸であるか確認する。(5〜10秒以内)
- 胸部の上下運動を見る。
- 呼吸があるか音で聞く。
- ほほで息を感じる。
4. 2回の人工呼吸
気道確保をおこない、鼻をつまんでゆっくり1秒かけて2回域を吹き込む。
注意
- 1回目の吹き込みで胸が上がらなかった場合には、もう一度気道確保をやり直し、吹き込みを再度行ないます。
- うまく胸が上がらない場合でも、吹き込みは2回までにしてすぐに胸骨圧迫を行ないます。
- AEDのボックス内に、一方向弁付きの感染防止用シートや人工呼吸用マスクが装備しているところもあるので、活用しましょう。
- 傷病者に出血がある場合や、感染器具を持っていないなどで口対口人工呼吸がためらわれる場合には人工呼吸を省略し、すぐに胸骨圧迫を行ないます。
5. AEDが到着しだい、AEDを使用
- ふたを開けて電源を入れる。
- 電極を右の鎖骨下と左のわき腹に貼る。
- 電気ショックが必要なら、放電ボタンを押す。
気道異物の除去
傷病者に反応や意識がある場合
傷病者に「のどが詰まったのですか」と訪ね、声が出せずうなずくようであれば窒息と判断し、119番通報を周囲に頼むと同時に、以下の方法で異物の除去を行います。傷病者が咳をすることが可能なら、咳をできるだけ続けさせます。咳ができれば、異物の除去にもっとも有効です。
- 腹部突き上げ法(ハイムリック法)
- 背部叩打法
傷病者の反応がない場合
反応がない場合、あるいは最初は反応があって応急手当を行なっている途中でぐったりして反応がなくなった場合には、ただちに心肺蘇生法を行ってください。
- 周囲に助けを呼び、救急車の要請。
- 気道の確保を行ない、人工呼吸を2回行う。
- 心肺蘇生法を行なっている最中に口の中に異物が見えたら、ガーゼなどで異物を取り除く。
- 口の中に異物が見えなければ、異物を探すことに時間を費やさず、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返す。
子どもの応急措置
救命措置のやり方は年齢に応じて異なりますが、子どもでも約8歳以上の場合は成人と同じ救命措置を行ないます。救命措置のやり方で”子ども”として扱うのは約8歳未満の場合です。そのうち、約1歳以上約8歳未満を”小児”、約12ヶ月までを”乳児”として扱います。
小児の応急措置
- 1. 意識の確認
- 成人と同じ。
- 2. 助けを呼ぶ
- 救助者が一人だけのときは、まず心肺蘇生法を2分間行なってから119番通報をします。
- 3. 呼吸の確認
- 成人と同じ。
- 4. 2回の人工呼吸
- 成人と同じ。
- 5. 胸部圧迫、人工呼吸
- 成人と同じ。胸部圧迫の深さは胸の厚みの1/3の深さで行ないます。子どもだからといってこわごわ弱く圧迫するのではなく、充分沈み込む程度に強く、早く、絶え間なく行なってください。反応がある場合の気道異物除去は成人と同じく、腹部突き上げ法や背部叩打法を行ないます。反応がなくなった場合は、心肺蘇生法を行ないます。救助者が一人の場合は、通常の心肺蘇生法を2分間行なったあと、119番通報します。
- 6. AEDが到着しだい、AEDを使用
- 成人と同じ。AEDに小児用パッドが備わっている場合は、それを使用してください。なければ成人用パッドを使用します。パッドを貼る位置はパッドに表示されている絵に従ってください。
乳児の応急処置
- 1. 意識の確認
- 成人・小児と同じ。足の裏をたたいて刺激するのも有効です。
- 2. 助けを呼ぶ
- 成人・小児と同じ。
- 3. 呼吸の確認
- 成人・小児と同じ。
- 4. 胸部圧迫・2回の人工呼吸
- 手順は成人・小児と同じ。胸部圧迫の位置は両乳首を結ぶ線の少し足側で行ない、圧迫は二本指を使います。胸部圧迫の深さは胸の厚みの1/3の深さで行ないます。テンポは成人・小児と同じです。